医家向け 超音波による骨盤計測方法

2.子宮後壁像、仙骨辺縁像および岬角について

仙骨辺縁像や岬角の読影に習熟するために、一度でいいですから、産褥期婦人の骨盤縦断断層を行ってみてください。
図-6,7は産後2日目産褥婦の骨盤縦断断層画像です。産褥子宮が骨盤内をほとんど占有しているので、その下の仙骨辺縁を高輝度線像として明瞭に読影することができます。これで子宮後壁像と仙骨辺縁像を明確に理解する事が出来ると思います。
子宮後壁は岬角で圧迫され、仙骨像と子宮後壁像とが岬角付近で近接していることがよくわかると思います。

図-6

図-7

図-8
図-8は妊娠36週妊婦の岬角付近の拡大像(縦断)です。子宮後壁と仙骨辺縁は似たような高輝度線像として描出されます。
したがって、子宮後壁像を仙骨辺縁像と見誤る可能性がありますので注意が必要です。実際のところ、この鑑別が困難な場合があり、この点が UOC計測上の問題点ではあります。

3.仙骨辺縁像の読影をさまたげるもの

A) 胎児頭頂部および胎児頭蓋底による音響学的陰影
児頭中央部は超音波減衰が少なく、超音波が減衰せずに通るので、あたかも音響学的な「窓」のような役割を果たしており、仙骨の読影をたすけるのですが、胎児頭頂部および胎児頭蓋底部の下方には音響学的陰影が生じますので、仙骨読影のさまたげになります。

 浮遊児頭の場合には、児頭頭頂部の音響学的陰影が仙骨岬角付近を隠してしまいますので、仙骨の読影に苦労することになります。

B) 直腸内の便塊によって、仙骨がわからなくなる場合があります。

C) 胎児の頭蓋骨と子宮壁との間で多重反射が起こる場合があり、仙骨がわからなくなる場合があります。

4.骨盤入口部の縦断断層方法について

当初は恥骨結合部と岬角とを結ぶ正中線上で縦断断層を行い、OCを計測しようと試みていましたが、これがなかなかうまくいきませんでした。

前述しましたように、恥骨結合像(図-5A)は全例で明瞭には描出されませんので、正確な恥骨側の計測起点を設定できないことが多いのです。それにOCは恥骨結合の内側を計測起点とするものなのですが、超音波断層では恥骨結合の内側が超音波入射方向の遠位側(裏側)にあるために、これを同定することが不可能なのです。

このあたりが OCを超音波で計測することは不可能であるとする根拠となります。 ここで研究をあきらめますと、永遠に超音波で骨盤計測は不可能ということになりますので、すこし考え方をきり変える必要がありました。


図-9
 そこで図-9のように、恥骨結合に近接する恥骨から岬角に向かって少し斜め方向に縦断断層を行い、前述しました恥骨上縁像(図-5B)の内側端を計測起点として岬角までの距離を計測することにしました。
このように計測すれば、OCそのものは計測できませんが、OCに近い値は計測できるはずです。これを我々は、鹿児島大産婦人科の吉永先生と相談してUOC(超音波産科的真結合線)と名付けることにしました。
下図(図-10,11)に示しますように、UOCは本来の産科的真結合線(OC)よりも少しずれて計測されることになり、UOCはOC より常に0.5~1cm長めに計測されるものと思われます。

図-10、11

5.UOC(超音波産科的真結合線)計測の実際

では、実際にどのようにしてUOCを計測するのか、その詳しい手技を説明いたします。 まず、コンベックスプローブに充分なゼリーを塗り、恥骨結合近くの左右いずれかの恥骨上にプローブをあてて、恥骨上縁像(下図の①)をさがします。超音波画像の右上隅に恥骨上縁像を固定し、これを支点としてプローブを動かしながら、岬角・仙骨辺縁像(下図の③、④)をさがします。

あるいは逆に、まず岬角や仙骨辺縁像を探して画像の左下隅に固定し、これを支点としてプローを動かし、恥骨上縁像を探してもよいです。

画像の右上隅に恥骨上縁像を描出させると同時に、左下隅に仙骨辺縁像を描出させるというプローブ操作技術が必要です。
下図(図-12の①)のように、恥骨上縁像(数mm巾の最も高輝度な部分)の内側端から岬角までの距離をUOCとして計測します。

胎児頭部が浮遊状態の場合、頭頂骨による音響学的陰影のために仙骨像の同定が困難となり、岬角付近の仙骨像のみしか描出できない場合があります。
適当に胎児の頭部が骨盤内に侵入してきている方が仙骨像は確認しやすいようです。しかしあまりに児頭が下降しすぎた状態では、胎児頭蓋底部の音響学的陰影のために岬角の同定が困難となります。


図-12

6.UOC(超音波産科的真結合線)の計測値の評価

UOC(超音波産科的真結合線)の平均値は鹿児島大学産婦人科による調査で 12.9cm~13cmという結果が出ており、UOCの平均値は約13cmでよいと思います。
OC(産科的真結合線)の平均値については、現在では、「現代日本女性のOCの平均値は約12cmでよいのでないか。」と言う意見が出ています。

このようにUOCとOCの平均値には約1cmの違いがあります。その理由は前述しましたように、超音波とX線の測定方法の違いによるものです。

日本産婦人科学会の定義によれば、OC(産科的真結合線)の平均値は11.5cmとなっておりますが、これはあまりに小さくて、とても現代女性のものとはいえないので、この定義は変えてほしいと考えております。

UOCは大きいものでは14~15cmの妊婦がいます。おそらく欧米人のUOCの平均値はもっと大きいものと思われます。

UOCが小さい妊婦では当然ながら難産が増加してきます。UOC が12cm未満の妊婦では難産傾向や分娩遷延傾向の増強により、帝王切開率の上昇、胎児仮死や新生児仮死の発生率の上昇がみられるとの鹿児島大学の調査結果が出ています。
しかし、12cm未満でも意外に安産になる場合もありますが、そのような妊婦では後述する骨盤開角が90度以上の場合が多いようです。

下図(図-13)はUOCが12cm未満の症例です。


図-13

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