妊婦のビタミンD欠乏 2024年改訂
妊婦さんは大半が「ビタミンD欠乏」です。
ビタミンDは血中の「25−OHビタミンD濃度」を計測します。血中ビタミンD濃度の正常範囲は、30〜100ng/mlで,30未満が「不足」、20ng/ml未満が「欠乏症」とされています。健康のためには「25−OHビタミンD濃度」を30ng/ml以上に保つ必要があります。
2004年神戸薬科大学の岡野博士の調査によれば、妊婦284人での調査では、血中ビタミンD濃度は、驚くほど低い・・なんと平均値9.8ng/mlで、ほとんどの妊婦が「ビタミンD欠乏」であることが報告されています。
(※当院のその後の調査で、日照時間の短い冬季には妊婦さんの血中ビタミンD濃度は顕著に低いことがわかってきました。また妊娠中,放置すると、ビタミンD濃度は大きく減少することもわかってきました。冬季はとくにおおきく減少するようです。冬は要注意です。)
当院の女性職員(11人)の血中25-OHビタミンD濃度を測ってみましたところ、7.4~20.1ng/mlで平均値が12.5ng/mlときわめて低く、10人が欠乏、3人が10ng/ml未満の超欠乏レベルでした。7.4ng/mlと最も低かった色の白い助産師さんは夜勤が多く、日焼けを嫌っていて日光はほとんど浴びないようにしていると言っていました。
長らくビタミンDは骨を強くする働きばかりが注目されてきましたが、2000年代に入って、ビタミンDの受容体(じゅようたい)が骨以外にも、血管・膵臓・心臓・筋肉・卵巣・精巣・神経細胞・造血細胞・免疫細胞などに次々と発見されており、人体のあらゆる機能を調節するホルモンのような働きがあることがわかってきています。米国では、今もっとも注目されているビタミンのようです。
ビタミンD欠乏が関連している疾患は、骨粗しょう症・くる病など骨の病気以外にもたくさんあります。
- 不妊症・月経困難症・多嚢胞性卵巣・月経不順・・・
- 早産・妊娠糖尿病・胎児発育不全・妊娠高血圧症候群などの周産期トラブル
- がん(大腸がん・肺がん・乳がん・・・
- 動脈硬化(心筋梗塞などの心臓病・脳卒中・・・
- 認知症・高血圧・糖尿病
- アレルギー疾患(花粉症・アトピー性皮膚炎・喘息・・・
- 自己免疫疾患(関節リウマチ・炎症性腸疾患・SLE・・・
- 感染症(肺炎・インフルエンザ・かぜ・・・新型コロナ感染とも関連を指摘されています。
- 精神病(うつ・自閉症・統合失調・・・
・・・などなど、多数あるようですが、なかでも周産期トラブル、乳がんや産後の膠原病・産後うつ病との関連が気になるところです。
現代日本人女性のビタミンD不足の原因は何でしょうか?
ビタミンDは紫外線により、皮膚でコレステロールから合成されます。屋外での自然光を浴びることが必要で、蛍光灯ではダメです。そして食事としてはビタミンD3・ビタミンD2として魚やキノコ類などから摂取できます。野菜・果物や肉には含まれていません。
紫外線を避ける風潮、日焼け止めクリームの多用、日中屋外にほとんど出ない、日光浴をほとんどしない事やビタミンD豊富な魚・キノコをあまり食べない事などが関係しているのでしょうか。さらに現代の夜型・都市型の生活習慣・ストレス過多がビタミンD不足の要因となっている可能性もあります。夜勤の多い女性は要注意です。
ビタミンDは紫外線により、皮膚でコレステロールから合成されますのでランチタイムでの10分くらいの日光浴がおすすめのようです。ただし長時間の日光浴は活性酸素が発生しますので危険です。
日焼けが嫌な女性も多いですし、そのような時は、ビタミンDのサプリメントをおすすめしています。ビタミンDのサプリメントは安価で安全です。当院で販売しています。1錠中に1000単位(25㎍)のビタミンD3が含有されています。
当院では、血中ビタミンD濃度を検査しております。血中の25―OHビタミンD濃度を計測します。健康維持のためには最低でも血中濃度30ng/ml以上を必要とされていますが、現代女性の生活習慣では、なかなか達成できないのではないかと危惧しております。
当院では、2019年末から、妊婦さんの血中ビタミンD濃度の計測を開始していますが、妊娠初期すでにビタミンD濃度が10ng/ml未満の妊婦さんが多数いることがわかってきました。なんと5ng/ml未満の妊婦さんもおられます。すでに妊娠前からビタミンD欠乏状態であったことが想像されます。そして、驚くことに20ng/ml以上の妊婦さんがほとんどいないことがわかってきました。岡野博士の調査どおり、妊娠中9割以上が「ビタミンD不足」どころか「ビタミンD欠乏」状態であるようです。
周産期領域におけるビタミンD不足・欠乏の問題は何でしょうか?
現在までの調査で、早産・妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・胎児発育不全などとの関連があるとされています。
現在、当院では10ng/ml未満の妊婦さん(ビタミンD超欠乏)には、ビタミンDサプリメントの服用1~2錠/日(25~50㎍/日)をおすすめしています。10~20ng/mlの妊婦さん(ビタミンD欠乏)には食事指導を行い、日光浴を推奨し、希望者にはビタミンDサプリ1錠(25㎍)/日の服用をおすすめしています。20ng/ml以上の妊婦さんはほとんどいないのですが、そうした方には特に指導はしておりませんでしたが、妊娠末期には大きく減少し欠乏状態になってしまうことがあります。つまり、妊娠によりビタミンD濃度は大きく減るようです。(特に冬場)。
妊娠初期には大半の妊婦さんが20ng/ml未満なのです。そして放置すると妊娠末期には10ng/ml未満の超欠乏状態となるようです。
まだ調査中ですので、結論は言えませんが妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・切迫早産・胎児発育不全の方は、ビタミンD濃度がやはり「超欠乏」(10ng/ml未満)の場合が多いようです。現在、当院ではこのような妊婦さんにはビタミンDサプリメントを1日量で2000単位(50㎍)の服用をおすすめしています。
当院で販売しているビタミンDサプリメントは非活性型のD3で、その体内での活性化は厳密にコントロールされているので、極めて安全性の高いことがわかっています。
これに対し、骨粗しょう症やくる病治療に用いられる「医薬品としのビタミンD」は活性型ですので、効きすぎて高カルシウム血症となる副作用が懸念されます。ビタミンDの服用に関しては、医薬品よりも、むしろサプリメントの方が安全なようです。当院で販売しているビタミンDサプリメントであれば、1日2錠(2000単位・50㎍)まで安心して服用できると思います。
※体内でのビタミンDの活性化には、マグネシウムが必要です。当院ではビタミンDサプリをすすめると同時にマグネシウムの多い食材を毎日食べるように指導しています。
※ビタミンDサプリ服用時には、ビタミンK不足を招く恐れがありますので、ビタミンKを多く含む食材(緑黄色野菜、海産物、納豆、青汁など)を食べる必要があります。ビタミンK不足は妊娠糖尿病・分娩時異常出血の増加を招く可能性があります。
ビタミンK不足を招く要因として、食用油(植物油脂)の摂りすぎもあります。その詳細は妊娠中の食事をご覧ください。
ビタミンDを妊娠中に補充した報告がすでにあるようですが、妊娠糖尿病・高血圧・早産などへの予防効果があるのかどうかは未知数であり、明確なエビデンスは示されていないようです。…ですが、
当院の調査では、妊娠初期にビタミンD欠乏であった妊婦を放置すると、妊娠末期には超欠乏状態になってしまうようであり、特に冬季はこの傾向が顕著で、冬季における周産期トラブルの増加と関係がありそうです。
周産期トラブルだけではなく、産後のうつ病・膠原病・アレルギー疾患との関連が危惧されます。特に女性の膠原病は産後に発症することが多いようですが、妊娠中のビタミンD減少との関連を心配しています。
現代の妊婦さんは、特に冬場は、妊娠中、ビタミンDを補充すべきです。同時にマグネシウム、ビタミンKの多い食材の摂取が必要です。
当院では、ビタミンDを補充するようになってから、妊娠糖尿病・早産が減っています。
(参考文献)- 「ビタミンDとケトン食 最強のがん治療」 古川健司 2019 光文社新書
- 「周産期領域におけるビタミンD」善方裕実(よしかた産婦人科)2019 最新女性医療15号
- 「ビタミンDの吸収と代謝」松井寿美佳 徳島赤十字病院 2019 最新女性医療15号
- 「病気を遠ざける!1日1回日光浴」斎藤糧三 2017 講談社+α新書
- 「1日15分、日向ぼっこするだけで健康になれる」2015 リチャード・ホブデイ
藤井留美訳 シャスタインターナショナル
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