妊娠糖尿病にはロカボ食 2026年改訂
当院は、2年前にお産の取り扱いを終了しました。当院で2024年まで、ロカボ食による妊娠糖尿病の治療を行っていました。その方法を紹介します。
妊娠糖尿病にはロカボ食 2026年改訂
「ロカボ食」は山田悟医師が提唱しているゆるやかな糖質制限食です。「ロカボ」はローカーボ(低糖質)の造語です。糖尿病治療を目的として、血糖を上昇させる糖質摂取を1日あたり、糖質量70~130gに抑える食事療法です。極端な糖質制限食で危惧されているケトアシドーシス発生の心配が無い方法です。
「いそいちロカボ食」は山田医師のロカボ食を妊娠糖尿病むけに当院独自にアレンジしたもので、糖質摂取を1日あたり、130~150g程度にゆるく抑えるものです。
糖質量をさらに落として、1日あたり、100~130g程度に抑える場合、当院ではこれを「山田ロカボ食」と称しています。 ※妊婦では糖質を1日あたり100g以下に下げないほうが良いと思います。
当院での妊娠糖尿病治療食は以下の2種類です。
当院の妊娠糖尿病の治療食
① いそいちロカボ食 1日糖質量130~150g
② 山田ロカボ食 1日糖質量100~130g
2023年現在、妊娠糖尿病の食事療法の主流は「低カロリー食」あるいは「カロリー制限食」です。「低カロリー食」にすると、確かにカロリーはお腹が減るほどの1600~1800kcalと低く、いかにも糖尿病に有効だろうと思うわけですが、そのうち6割を何故か糖質が占めるように献立されますので、単純に4kcal/gで計算すると、糖質は1日あたり240g~270gと高くなり、糖尿病の治療食としては意外に高糖質ということになってしまいます。
この「低カロリー食は実は意外に高糖質」という事実が非常に重要です。
妊娠糖尿病においては、食後2時間の血糖コントロール目標が120mg/dl以下という極めて厳しい設定となっています。低カロリー食で管理すると、高糖質ですので、食後2時間血糖の目標値をクリアできない場合が少なくないのです。
「低カロリー食」は、カロリー計算が面倒くさいですし、(これは栄養士にとっては、本当に大変らしいです。おなかが減る割に血糖コントロールがうまくいかず、1日1800カロリーでだめだと、1600カロリーにまで落とし、さらに6分割食にしたりして、それでもうまくコントロールできずに治療が行き詰まるという印象でした。そうなると高次施設に紹介するのですが、そこでも糖質60%の「高糖質の低カロリー食」ですので、コントロールできないとインスリン治療を受けることになってしまうようです。
インスリン治療が悪いといっているわけではありません。血糖値をあげる糖質を減らさず、むしろ増やして、きびしい食後血糖値基準をクリアしなければ、血糖をさげるインスリンを使用するという治療法は、「マッチ・ポンプ」(マッチで火をつけておいて、消火ポンプで消すというたとえ話)と揶揄されても仕方がないと思います。
妊娠中に糖質を制限することがいまだに危険視されています。これは、いまだに胎児のエネルギー源がブドウ糖のみであると考えられているからではないでしょうか。
胎児のエネルギー源がブドウ糖のみであるという神話はすでに崩れ去っています。人間の脳細胞のエネルギー源がブドウ糖のみであるという神話も崩れ去っています。人間は、古来、脂肪酸由来のケトン体をむしろ主要なエネルギー源としてきたことを多くの有識者が主張するようになっています。
「糖質制限食」もいろいろありますが、その中には、糖質摂取を究極的な1日10~50g以内に抑えこみ、その結果として産生される「ケトン体」を主なエネルギー源として生活する「ケトン食」という極度の糖質制限食もあるようです。小児てんかんや末期がんの治療食として応用されています。
「ロカボ食」はこのような過度の糖質制限ではありません。妊娠中でも安心して行ってもらえるゆるやかな糖質制限食です。糖質が全くダメということではなく、毎食、適度にご飯を食べる方法です。過剰に糖質を摂らないようにするだけです。
「ロカボ食」で妊娠糖尿病を管理するようになってから数年以上経過し、70名以上の妊娠糖尿病治療を行いましたが、ほとんどの方で良好な血糖コントロールがえられています。
ゆるゆるの糖質制限食である「いそいちロカボ食」は特に複雑なものではありません。主食のご飯を毎食重さ80gにへらし、その他の副食メニューは普通食と変わらず、味付けの砂糖をラカントS(エリスリトール)に変えるだけです。間食のおやつは低糖質(糖質10~15g)の物にします。
ラカントS(エリスリトール)は糖質(糖アルコール)ですが、血糖はあげないようです。カロリーもゼロです。安全な甘味料として認可されています。
「いそいちロカボ食」で食後血糖のコントロールが不十分な場合は、ご飯を毎食重さ70gにへらし、おやつは糖質10g以内の物にして、デザートの果物を省きます。これは山田悟医師の推奨する糖尿病治療食とほぼ同じですので、当院ではこれを「山田ロカボ食」と称しています。しかしながら、糖質量は山田医師の推奨するところの70~130g/日ではなく、100~130g/日くらいにゆるめに調整するようにしています。つまり1日あたり糖質を10~20g落とす程度にとどめます。妊婦で、1日あたりの糖質量を100g未満におとすのは酷ではないかと思います。「山田ロカボ食」でコントロール不良の場合は高次施設へ紹介します。
ゆるやかな糖質制限食である「ロカボ食」によって、妊娠糖尿病の大半が治療できると思われます。理屈は簡単です。血糖を上げるものが糖質のみであり、糖質摂取を減らせばよいだけの話なのです。しかもゆるやかに糖質をへらすだけでもOKなのです。
現在は、ロカボ食に加えて、悪い油をへらす調理方法を模索・検討しています。
以下は、当院の栄養士が妊娠糖尿病の妊婦さんに行っている栄養指導の実際です。参考にしてください。
- ご飯は必ず、量りで計量する。
「いそいちロカボ食」ではご飯80g。「山田ロカボ食」ではご飯70g - 朝食は抜かない。妊娠中、空腹時間が長すぎると血糖値が下がりすぎて昼食後の血糖値が急上昇してしまう。
食べる順番 野菜➡お肉・魚➡ごはん(まず野菜などの食物繊維を摂り、糖の吸収を緩やかにする。次に満腹感を高めるタンパク質の多いものを食べる。) - 糖質オフだと、つまり穀物を減らしすぎると、便秘になりがち。適当量の穀物はOK。そして、いろいろな食物繊維を今まで以上に摂るようにする。
- 小腹(こばら)がすいたら、昆布・ナッツ類・小魚。間食は1日、重さ50gが目安。ただし、ナッツは脂肪が多く、食べ過ぎないように。
- パンを食べるときはブランパンがおすすめ。※ブランとは小麦の外皮。
- イモ類、南瓜(カボチャ)は高糖質。食べる時は気を付ける。
例えば、ポテトサラダを食べるなら、じゃが芋の分だけご飯をへらす。
じゃが芋より野菜の量をふやす。じゃが芋をおからに換える。 - おかずの味付けが高糖質にならないように
トマトケチャップ・みりん・砂糖・濃厚ソース・焼き肉のたれ・・など注意。 - 酢は糖質の吸収を緩やかにする調味料です。米酢・黒酢より穀物酢・リンゴ酢・ワインビネガーの方が糖質少ない。
- パスタ・ラーメンが食べたくなったら、蒟蒻(こんにゃく)麺。
- 揚げ物は衣やつなぎに注意が必要。
きなこ・おから・高野豆腐は〇 パン粉・小麦は× - 春雨はヘルシーなイメージがあるが実は高糖質。
- ラカントS(エリスリトール)は血糖の上昇無し。砂糖の代わりに使える。
- 身体を動かすなら、血糖が高くなる食後1時間後がよい。
- 夕食では1日に消費したタンパク質・ビタミン・ミネラルの補給が重要。
夕食では炭水化物をなるべく控える。 - 果物は朝食の時に食べるとよい。ミネラル・ビタミンが有効活用される。 野菜ジュースやスムージーは咀嚼しないので、摂りすぎてしまい血糖が急上昇するので飲まない方が無難。
- 焼き肉のタレは高糖質。塩かレモンに換える。
- 外食の食べ物
焼き鳥・煮魚・煮物・照り焼きには砂糖とみりんが多いので要注意。
定食ものでは、ご飯を控え、納豆・冷奴・お浸し・サラダをプラスする。 - コンビニエンスストアでの食材
ゆで卵・サラダチキン・冷奴・魚の水煮缶・糖質の少ないおでんの具などがよい。 - 糖類(とうるい)ゼロと書かれているものは要注意。甘味料などの糖質が含まれる。
糖質(とうしつ)ゼロは糖質を含まないのでOK。 - ひと口食べたら30回かむ。30分以上かけて食事する。
- 油は良質のもの新鮮なものを使う。古い油は使わない。
テフロン加工のフライパンで油の量が減らせる。
ショートニング・マーガリンなどは減らす。 - 発酵食品や食物繊維で腸内環境を整える。
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