超音波検査

毎回の妊婦健診で必ず、超音波断層検査を行います。おなかの赤ちゃんや子宮や骨盤(こつばん)について、たくさんの情報をえることができます。そのうちの、いくつかを紹介しましょう。

CRL(胎児頭臀長とうでんちょう)の計測

胎児の頭の先から、おしりまでの長さをはかります。
妊娠3ヶ月頃に必ず計測しておきます。正確な分娩予定日を決定するために必要な検査です。

基本的な胎児計測
児頭大横径BPD・大腿骨長FL・腹部前後径APTD・腹部横径TTD・胎児推定体重EFW

毎回の妊婦健診で、助産師・医師がおなかの赤ちゃんの頭、おなか、大腿骨(だいたいこつ)の大きさなどを計測し、赤ちゃんの発育が正常かどうかを調べます。
妊娠7ヶ月以降で、これらの計測値を超音波装置に入力しますと、赤ちゃんの現在の体重を装置が自動的に計算してくれます。 約10%の測定誤差がありますが、おおよその赤ちゃんの大きさを知る事ができます。

LCC ( 子宮頸管長 ) の計測・子宮頸管の観察

当院では妊娠4~7ヶ月の間、妊婦健診の際に経腹超音波検査で子宮頸管(子宮の出口)を注意深く観察し、この長さを計測したり、この出口が開いていないかどうかを調べています。
この子宮の出口の閉じている部分の長さ(子宮頸管長)が3cm未満になったり、出口が開いていたり(内子宮口の開大)しますと早産となることがあります。

最近は経膣超音波断層検査で子宮頸管を詳細に観察することができるようになってきました。切迫早産傾向・子宮頸管無力症を経膣超音波検査で早期に発見し、早産を予防する試みが全国の産婦人科施設で行われるようになってきています。しかし、経膣超音波検査を行うために毎回の妊婦健診で内診台にあがってもらうことは、妊婦さんにかなりの精神的負担をかけることになります。 当院では、まず経腹超音波検査で子宮頸管を観察し、異常を感じた場合にのみ経膣超音波検査を行うようにしています。

LC(子宮頚管長)の計測・子宮頚管の観察 (平成28年4月 改訂)

子宮頚管長は主に経膣(けいちつ)エコー検査で計測します。経腹(けいふく)エコーでも計測できないことはありませんが、経膣エコーの方が正確です。

※ USG=超音波断層検査 ultrasonography エコー検査のことです。
経膣USG=経膣超音波断層検査 経腹USG=経腹超音波断層検査

経膣(けいちつ)エコー検査では、膣(ちつ)内に細長い超音波プローべを挿入します。
上図のように子宮頚管を直接観察できますので、より精密に画像診断することができますが、妊婦さんには内診台に上がってもらわなくてはなりませんので、毎回の妊婦健診の際、妊婦さん全員に経膣エコーを行うことは困難です。・・・妊婦さんにとっても、毎回の健診で下着をぬぎ内診台にあがるのは苦痛だと思います。
経腹(けいふく)エコー検査は子宮頚管を経膣(けいちつ)エコーほど詳細に検査することはできません。しかし、おおまかにではありますが、お腹から子宮頚管を手軽に観察することができますので、切迫流早産のスクリーニング検査として適していると思います。

国内では経膣(けいちつ)エコーで子宮頚管を観察することのみがコンセンサスを得ており、経腹(けいふく)エコーによる子宮頚管観察は残念ながら、最近はほとんど行われておりません。・・・でも、30年前の学会では、経腹(けいふく)エコーによる子宮頚管観察方法が最初に発表されたです。 私は30年くらい前に、経腹(けいふく)エコーで子宮頚管を観察する方法を研究していました。その詳細は「産婦人科の実際」誌(第37巻第2号 昭和63年2月発行)の中に、「超音波断層による子宮出口部の観察」として記載してあります。私は国内で最初に超音波による子宮頚管観察を発表した者のなかの一人です。 しかしその後、経膣(けいちつ)エコー検査が登場し、国内外で「経膣超音波検査による子宮頚管長の計測」などといった報告が相次いで報告され、切迫流産・切迫早産・子宮頚管無力症の診断法として経膣法が広くコンセンサスを得られるようになってきました。

「子宮頚管長」というキーワードは最近マスコミでも取り上げられるようになっており、インターネット検索の普及により、妊婦さんの間でも周知されるようになってきました。 妊婦さんのほうから、経膣エコーによる子宮頚管長の計測を要求される事もありますし、30年前に「子宮頚管長」と言ってもほとんど認知されなかった頃と比べると、隔世の感があります。

子宮頚管無力症などの異常を早期に発見するためには、妊娠4ヶ月から毎回の妊婦検診で子宮頚管を観察する必要があると私は考えております。しかし、皆さんに毎回の健診で内診台に上がってもらうわけにはいきませんので、いそいち産婦人科では、まず経腹(けいふく)エコーで子宮頚管を観察し(スクリーニング)、異常を察知した方のみ、内診台で経膣(けいちつ)エコーによる精密検査を行うようにしています。 経腹(けいふく)エコーで子宮頚管長の短縮や内子宮口の開大、胎児の異常な下降などが疑われた場合は、必ず経膣(けいちつ)エコーで精密検査をします。経腹(けいふく)エコーで子宮頚管を観察できるのは、妊娠4~7ヶ月の間だけです。妊娠8ヶ月以降は胎児が下降してきますので、経腹(けいふく)エコーで頚管を観察することはできなくなります。胎児が骨盤内に異常に下降している場合とか、切迫早産の兆候が見られる場合に経膣(けいちつ)エコーによる子宮頚管観察が行われます。
超音波検査による子宮頚管の観察のみで、流産・早産を防ぐことはできません。流産・早産の治療・予防に関しては、「絨毛膜羊膜炎」というもうひとつのキーワードがあります。この病態を超音波検査のみで診断する事はできません。ただ、絨毛羊膜炎の初期段階で、「子宮頚管長の短縮」や「内子宮口の開大」などの異常所見がエコー検査でみつかる事があります。特に「内子宮口の開大」は最近、ファネリング=funneling ( 内子宮口が漏斗状に開く )と呼ばれるようになっており、絨毛羊膜炎を疑う異常所見となっています。ファネリングも経腹(けいふく)エコーで見つけることが可能です。

経腹(けいふく)エコーによる子宮頚管観察は非常に有用であるにもかかわらず、頚管長を正確に計測する事はできないという理由だけで、ほとんど行われなくなったのは残念です。

UOC(超音波検査による産科的真結合線)の計測

当院では妊娠8ヶ月以降、超音波断層検査により産科的真結合線(骨盤という赤ちゃんが生まれるときに通り抜ける骨のトンネルの入り口の直径)の長さを計測しています。これによって、妊婦さんのそれぞれの骨盤の広さがわかりますので、骨盤のせまい人には早めに難産にならないような対策をとってもらうことができます。
下図のように、お母さんの恥骨から仙骨までの距離を計測します。

PA(骨盤開角 pelvic aperture angle)の計測

骨盤開角というのは下図に示しますように、仙骨とUOCとの間の角度のことで、最近の新しい超音波断層装置では、この角度を計測することができるようになってきました。普通は90度くらいですが、80度未満の妊婦さんでは、骨盤というトンネルの途中がせまくなり、難産になることがあります。逆に100度以上もある産婦さんでは急産(お産が途中から急激に進んで生まれてしまう)になることがあり、注意が必要になります。

※超音波検査による産科的真結合線や骨盤開角の計測は、まだ産婦人科学会でのコンセンサスは得ておりません。
UOCやPAという略語は1998年に鹿児島大学産婦人科が提唱したものです。

3D(3次元)超音波断層検査

胎児を立体的に観察することができるような装置があります。
高度なコンピューター技術を用いて構築された映像で、皮膚の色などもコンピューターにより作られたもので、実際の色ではなく、あくまでも虚像(きょぞう)にすぎないことを理解しておいてください。

妊娠12週の胎児 
(右図の黄色く塗った部分はへその緒です。へその緒は胎児のおへそから胎盤につながっており、へその緒の中には3本の血管があります。赤ちゃんはお母さんから胎盤とへその緒を介し、栄養と酸素をもらって育っていくのです。)
胎児の顔です。三次元超音波では、立体的に違う角度から顔を観察することができます。

DFE (胎児大腿骨遠位端化骨核)PTE(胎児脛骨近位端化骨核)

 胎児の膝関節付近を観察すると、妊娠37週前後までにほぼ全例でDFEが出現してきます。
PTEは遅れて出現してきます。出生前に上記の二つの化骨核が出現していれば、胎児の骨成熟度は充分であり、胎児の未熟性は低いものと評価しています。 def1

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カラードプラ・パルスドプラ法による胎児血流計測
胎児中大脳動脈のRI(resistance index)⇒MCA-RI
胎児臍帯動脈のRI⇒UA-RI

胎児血流計測(臍帯動脈や赤ちゃんの脳の動脈中の血液の流れ具合をしらべる)を可能としてくれる高性能な超音波断層装置があります。
この計測は皆さんの赤ちゃんが少し発育が悪いのではないかと疑われる場合に実施されます。

カラードップラー法によるお母さんの子宮動脈血流計測
妊娠7ヶ月以降、母体両側の子宮動脈血流波形を観察し、ノッチの有無をしらべる方法

胎児の血流計測と同様に重要なものがあります。母体の子宮動脈血流計測です。妊娠7ヶ月以降にカラー・パルスドップラー装置を使って、母体両側の子宮動脈血流波形計測をおこない、子宮への血液の流れ具合をしらべようとするものです。当院でも平成22年から計測を開始しています。

子宮動脈の血流波形にノッチ(V字状の刻み目)が存在すると、子宮動脈の中の血液の流れが悪いのではないかと疑われるのです。子宮動脈は左右2本ありますが、この両方にノッチが出現していると、おなかの赤ちゃんの発育が悪くなったり、お母さんに高血圧がでてきたり、陣痛発来した時に赤ちゃんが苦しくなる可能性があるということが予想されるのです。


左側子宮動脈波形における拡張期早期ノッチ(矢印)
→妊娠31週の妊婦さんのものです。この方の場合、ノッチは左側だけで、両側にはみられませんでした。特に赤ちゃんが生まれる時に問題はありませんでした。

どうやら、両側にノッチがみられる妊婦さんの場合に注意が必要のようです。最近の例としては、両側ノッチの見られた妊婦さんのお産の時に、臍帯過捻転 (臍帯がねじれすぎていて赤ちゃんが苦しくなる。)の症例や、部分胎盤早期剥離(生まれる前に胎盤の一部がはがれてしまう)の症例や妊娠高血圧症候群などの症例がありました。

子宮動脈波形から、子宮動脈中の血液の流れ具合の指標であるRI(resistance index)やPIやS/D比などの値を計測する事もできます。両側の子宮動脈でRIが0.58を超える場合は注意が必要であるという印象を持っております。およそ10年くらい前から、国内でも臨床使用されてきていますが、サンプリングの問題(長い子宮動脈のどの位置で計測するのかという問題)や計測手技がやや煩雑で面倒くさいという問題があり、あまり普及してはいないようです。私はこの検査をする意義は高いと考えております。面倒くさいですががんばって計測しています。

子宮動脈血流計測スクリーニング

BN  両側ノッチ ( bilateral notch ) の有無をしらべる

当院では、妊娠25週前後の妊婦さん全例において、超音波カラードプラー法によ り  左右の子宮動脈血流速度波形を検査し、そのRI(Resistance index)の計測、拡張 期切痕 diastolic notch (ノッチ)の有無を検索しています。

左右の子宮動脈血流波形両方にノッチが見られることを両側ノッチ、略して「BN」と称しています。ここ1~2年間検査を続けてきた結果、次のような事がわかってき ました。

妊娠25週前後でBNがみとめられると妊娠後期におよそ44%の確率(18例中8例)で低出生体重児(2500g未満)が出生し、およそ22%の確率(18例中4例)でPIH(妊娠高血圧症候群)が発症する ことがわかりました。

妊娠25週前後でBNがみとめられた妊婦さん18例のうち、妊娠30週でもBNのみられた人が9例いましたが、この中のおよそ67%(9例中6例)で低出生体重児が出生し、そのうち5例はNRFS(胎児機 能不全)などの理由で帝王切開となっています。  
およそ44%(9例中4例)がPIHを発症し、うち1例は妊娠33週で常位胎盤早期剥離をおこしています。

すべてのカルテをまだ調査していませんので、まだ私なりの結論を引き出すまでにはいたっていませんが、妊娠25週でのBNの有無を検索するスクリーニングとしての臨床的意義は極めて高いものと考えて おります。

BNとともにRI(resistance index)についてもその臨床的意義は高いもの考えており、現在はRIが0.6以上は要注意、0.7以上は厳重警戒としています。

現在、日本の産科一次施設においては、子宮動脈血流速度を計測することがまだひろく一般に行われてはいないようです。  
すでに国内外の文献で10年以上前から報告されているのですが、何故か受け入れら れておりません。医療保険診療としてもまだ認められておりませんので、これで診療報酬を受け取れるわけではありません。

私はBNの検査意義は極めて高いものと確信しております。慣れれば簡便で信頼性の高い検査です。

一次施設で妊娠25週前後でのルーチン検査として定着し、広くコンセンサスを得られ る時が来ることを願っています。
私は今後もこの検査を続行します。

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