超音波検査

毎回の妊婦健診で必ず、超音波断層検査を行います。おなかの赤ちゃんや子宮や骨盤(こつばん)について、たくさんの情報をえることができます。そのうちの、いくつかを紹介しましょう。

LC ( 子宮頸管長 ) の計測・子宮頸管の観察

妊娠4~7ヶ月の間、妊婦健診の際に経腹(けいふく)エコー検査で子宮頸管(子宮の出口)を注意深く観察し、この長さを計測したり、この出口が開いていないかどうかを調べています。
この子宮の出口の閉じている部分の長さ(子宮頸管長)が3cm未満になったり、出口が開いていたり(内子宮口の開大)しますと早産となることがあります。

最近は経膣(けいちつ)エコー検査で子宮頸管を詳細に観察することができるようになってきました。切迫早産傾向・子宮頸管無力症を経膣エコーで早期に発見し、早産を予防する試みが全国の産婦人科施設で行われるようになってきています。しかし、経膣(けいちつ)エコーを行うために毎回の妊婦健診で内診台にあがってもらうことは、妊婦さんにかなりの精神的負担をかけることになります。 当院では、まず経腹(けいふく)エホー検査で子宮頸管を観察し、異常を感じた場合にのみ経膣(けいちつ)エコー検査を行うようにしています。

LC(子宮頚管長)の計測・子宮頚管の観察 (平成28年4月 改訂)

子宮頚管長は主に経膣(けいちつ)エコー検査で計測します。経腹(けいふく)エコーでも計測できないことはありませんが、経膣エコーの方が正確です。

※ USG=超音波断層検査 ultrasonography エコー検査のことです。
経膣USG=経膣超音波断層検査 経腹USG=経腹超音波断層検査

経膣(けいちつ)エコー検査では、膣(ちつ)内に細長い超音波プローべを挿入します。
上図のように子宮頚管を直接観察できますので、より精密に画像診断することができますが、妊婦さんには内診台に上がってもらわなくてはなりませんので、毎回の妊婦健診の際、妊婦さん全員に経膣エコーを行うことは困難です。・・・妊婦さんにとっても、毎回の健診で下着をぬぎ内診台にあがるのは苦痛だと思います。
経腹(けいふく)エコー検査は子宮頚管を経膣(けいちつ)エコーほど詳細に検査することはできません。しかし、おおまかにではありますが、お腹から子宮頚管を手軽に観察することができますので、切迫流早産のスクリーニング検査として適していると思います。

国内では経膣(けいちつ)エコーで子宮頚管を観察することのみがコンセンサスを得ており、経腹(けいふく)エコーによる子宮頚管観察は残念ながら、最近はほとんど行われておりません。・・・でも、35年前の学会では、経腹(けいふく)エコーによる子宮頚管観察方法が最初に発表されたです。 私は35年くらい前に、経腹(けいふく)エコーで子宮頚管を観察する方法を研究していました。その詳細は「産婦人科の実際」誌(第37巻第2号 昭和63年2月発行)の中に、「超音波断層による子宮出口部の観察」として記載してあります。 その後、経膣(けいちつ)エコー検査が主流となり、国内外で「経膣超音波検査による子宮頚管長の計測」などといった報告が相次いで報告され、切迫流産・切迫早産・子宮頚管無力症の診断法として経膣法が広くコンセンサスを得られるようになってきました。

「子宮頚管長」というキーワードは最近マスコミでも取り上げられるようになっており、インターネット検索の普及により、妊婦さんの間でも周知されるようになってきました。 妊婦さんのほうから、経膣エコーによる子宮頚管長の計測を要求される事もありますし、35年くらい前、「子宮頚管長」と言ってもほとんど認知されなかった頃と比べると、隔世の感があります。

子宮頚管無力症などの異常を早期に発見するためには、妊娠4ヶ月から毎回の妊婦検診で子宮頚管を観察する必要があると考えております。しかし、皆さんに毎回の健診で内診台に上がってもらうわけにはいきませんので、いそいち産婦人科では、まず経腹(けいふく)エコーで子宮頚管を観察し(スクリーニング)、異常を察知した方のみ、内診台で経膣(けいちつ)エコーによる精密検査を行うようにしています。 経腹(けいふく)エコーで子宮頚管長の短縮や内子宮口の開大、胎児の異常な下降などが疑われた場合は、必ず経膣(けいちつ)エコーで精密検査をします。経腹(けいふく)エコーで子宮頚管を観察できるのは、妊娠4~7ヶ月の間だけです。妊娠8ヶ月以降は胎児が下降してきますので、経腹(けいふく)エコーで頚管を観察することはできなくなります。胎児が骨盤内に異常に下降している場合とか、切迫早産の兆候が見られる場合に経膣(けいちつ)エコーによる子宮頚管観察が行われます。
超音波検査による子宮頚管の観察のみで、流産・早産を防ぐことはできません。流産・早産の治療・予防に関しては、「絨毛膜羊膜炎」というもうひとつのキーワードがあります。この病態を超音波検査のみで診断する事はできません。ただ、絨毛羊膜炎の初期段階で、「子宮頚管長の短縮」や「内子宮口の開大」などの異常所見がエコー検査でみつかる事があります。特に「内子宮口の開大」は最近、ファネリング=funneling ( 内子宮口が漏斗状に開く )と呼ばれるようになっており、絨毛羊膜炎を疑う異常所見となっています。ファネリングも経腹(けいふく)エコーで見つけることが可能です。

カラードップラー法によるお母さんの子宮動脈血流計測

胎児の血流計測と同様に重要なものが母体の子宮動脈血流計測です。妊娠7ヶ月以降にカラー・パルスドップラー装置を使って、母体両側の子宮動脈血流波形計測をおこない、子宮への血液の流れ具合をしらべようとするものです。当院でも平成22年から計測を開始しています。

子宮動脈の血流波形にノッチ(V字状の刻み目)が存在すると、子宮動脈の中の血液の流れが悪いのではないかと疑われるのです。子宮動脈は左右2本ありますが、この両方にノッチが出現していると、おなかの赤ちゃんの発育が悪くなったり、お母さんに高血圧がでてきたり、陣痛発来した時に赤ちゃんが苦しくなる可能性があるということが予想されるのです。

子宮動脈血流計測スクリーニング

BN  両側ノッチ ( bilateral notch ) の有無をしらべる

当院では、妊娠25週前後の妊婦さん全例において、超音波カラードプラー法によ り  左右の子宮動脈血流速度波形を検査し、そのRI(Resistance index)の計測、拡張 期切痕 diastolic notch (ノッチ)の有無を検索しています。

左右の子宮動脈血流波形両方にノッチが見られることを両側ノッチ、略して「BN」と称しています。ここ1~2年間検査を続けてきた結果、次のような事がわかってき ました。

妊娠25週前後でBNがみとめられると妊娠後期におよそ44%の確率(18例中8例)で低出生体重児(2500g未満)が出生し、およそ22%の確率(18例中4例)でPIH(妊娠高血圧症候群)が発症する ことがわかりました。

妊娠25週前後でBNがみとめられた妊婦さん18例のうち、妊娠30週でもBNのみられた人が9例いましたが、この中のおよそ67%(9例中6例)で低出生体重児が出生し、そのうち5例はNRFS(胎児機 能不全)などの理由で帝王切開となっています。
およそ44%(9例中4例)がPIHを発症し、うち1例は妊娠33週で常位胎盤早期剥離をおこしています。

妊娠25週でのBNの有無を検索するスクリーニングとしての臨床的意義は極めて高いものと考えております。

BNとともにRI(resistance index)についてもその臨床的意義は高いもの考えており、現在はRIが0.6以上は要注意、0.7以上は厳重警戒としています。

最近は、高画質プローブを導入し、妊娠初期(妊娠11週~13週)内子宮口付近で両側子宮動脈血流のPI ( UTPI ) を計測しています。近年増加している妊娠高血圧症候群との関連を調査中です。

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平日 受付時間 午前9時~12時まで
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平日午前の新患受付は午前11時30分で締め切らせていただきます。
再来の患者さんは12時まで受け付けております。
平日夕方の新患受付は午後4時30分で終了いたします。
再来の患者さんは5時まで受け付けております。
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